
子どものためのスポーツ栄養学 VOL.1〜VOL.5(2009年6月1日〜29日配信)
【執筆者プロフィール】
桑守 豊美(くわもり とよみ)
富山短期大学教授。
富山県スポーツ医・科学的トレーニング推進委員などを務め、富山のスポーツ界を栄養学の面からサポートしている。
「スポーツ栄養学で健康・成長・競技力アップ」
はじめに
スポーツをすると、おなかがすきます。おいしい食事を楽しく、腹いっぱい食べて満足する。スポーツをしているお子さんにとって大切なことです。
食事を用意されるお母さんや、お子さん本人が、「スポーツ栄養」について知識を持ち、毎日の食生活に生かして下されば、次の事柄がもっと良くなります。
(1)健康と、健やかな成長につながります。
「食は命なり」とも言います。食べることで体を維持し、成長し、活動することができます。また、多過ぎても少な過ぎても不健康につながります。
(2)楽しくトレーニングができ、競技力がアップします。
スポーツ選手は一般の方よりたくさんの栄養が必要です。体づくりだけでなく、疲れがたまりにくい体質にすることで、より良いトレーニングが可能になります。
(3)将来に渡って、適切な食事のとり方が身につきます。
食習慣は10歳ぐらいまでに定まるといわれています。自由気ままな食事の摂り方が許されてしまう豊かな時代だからこそ正しい知識を身につけてほしいと思います。
これから12回にわたって
▽子供の基本的な食事の食品量、割合
▽スポーツをすることによって、増やして欲しい食品と量
▽効果的な摂取タイミング
▽水分のとりかた
▽間食のとりかた
▽試合に勝てるお弁当
▽故障を予防し、治す食事
▽サプリメントのとりかた
など、スポーツ栄養学のあれこれを平易にお伝えしていきます。また、読者のみなさまからのご質問やコメントなどもいただき本当の[お役立ち情報]にしていきたいと思います。
「スポーツをしている人の消費エネルギー」
スポーツをしている人は普段の生活(成長分も含む)のために使っているエネルギー量に加え、スポーツに使うエネルギー量を余分に食べる必要があります。
■年齢や性別、体重によって違う消費量
日常生活のために使うエネルギー量は年齢や性別、体重によって異なります。年齢が低いほど体を成長させるためにエネルギーが多く必要です。性別では、筋肉量の多い男子のほうが多く必要となります。
活動レベルを「普通」とした場合の体重1kg当たりの必要エネルギー量に、体重を乗ずることで1日に必要なエネルギー量が分かります。
■スポーツのために余分に食べる
部活動などをしている子どもたちを調査した結果、スポーツをすることで消費されるエネルギー量(kcal)はおおよそ、男子で小学3・4年生が400、同5・6年生で500、中学生で800、高校生で1000ぐらいであることが分かりました。女子は男子の8割くらいです。競技や運動強度による差はありますが、目安と考えてください。
スポーツをする子どもたちが1日に必要とするエネルギー量の目安は以下のように算出できます。
【体重1kg当たりの日常生活で消費するエネルギー量kcal】×【体重kg】+【スポーツで消費するエネルギー量kcal】=【必要量kcal】
※「平均体重kg」を用いて算出すると以下のような目安になります。
▼男子
▽小学3・4年
70×「28.0」+400≒2360kcal
▽小学5・6年
65×「35.5」+500≒2800kcal
▽中学生
53×「50.0」+800≒3450kcal
▽高校生
47×「58.3」+1000≒3740kcal
▼女子
▽小学3・4年
66×「27.2」+320≒2110kcal
▽小学5・6年
60×「35.7」+400≒2540kcal
▽中学生
50×「45.6」+640≒2920kcal
▽高校生
44×「50.0」+800≒3000kcal
(参考)18-29歳の一般成人が日常生活で必要とするエネルギー量は、男性2650kcal、女性2050kcal。
次回は何をどれぐらい食べればよいかをお伝えします。
「トレーニングのための栄養摂取」
スポーツ栄養の大原則は、生活(成長を含む)するための栄養に加えて、スポーツで使った栄養を過不足なく摂取することです。前回は、その全体量を算出する方法を紹介しました。そして、これらのエネルギーと栄養素を摂取する際、スポーツ選手に心掛けてほしいポイントが以下の4つです。
【スポーツ選手に心掛けてほしい栄養の摂り方】
(1)スポーツで使うエネルギーと栄養素を事前に補給する
(2)スポーツで発汗する分の水分量を補給する
(3)体のダメージを止め、修復する栄養素をトレーニング後30分以内に摂る
(4)睡眠前、骨を強くするために牛乳を飲む
今回は、(1)スポーツで使うエネルギーと栄養素を事前に補給するための軽食についてお話しします。
私たちは1日3食を摂っていますが、スポーツで消費するエネルギーが500kcalを超えると、スポーツを開始する前の食事だけでは足りなくことがあります。放課後に部活動をする子どもたちならば、昼食だけでスポーツによる消費量を補うことは不可能です。
エネルギー不足の状態でもトレーニングは行えますが、そうなると体の成分、特に筋肉が分解して不足分を補います。“だるさ”がそれを表しており、疲れやだるさを少なくし、なによりも良いトレーニングを行うために、トレーニングを行う1時間から30分前に軽食を摂ります。
スポーツで800kcalを消費する中学男子なら400kcalぐらい摂ってもよいのですが、トレーニングに支障のない自分にあった量を食べてください。高校生ならおにぎり2個、中学生なら1個が目安ともお伝えしています。この時の栄養素はトレーニング時のエネルギーとなる炭水化物(糖質)が中心です。
(参考)=数字は順に重量/エネルギー/炭水化物
▽おにぎり
150g/270kcal/59g
▽あんパン
80g/225kcal/40g
▽バナナ(可食部)
100g/86kcal/22.5g
▽ウィダーインゼリー
180g/180kcal/45g
【心掛けてほしい栄養の摂り方】(2)
スポーツ選手の水分補給
今回はスポーツ選手に心掛けてほしい水分の摂り方を紹介します。小中学生は体重の65%以上を水分が占めています。スポーツをして発汗で失う水分量を補う必要があり、競技やトレーニング状況にもよりますが、その量は1リットル以上にもなります。
水分の減少が体重の2%(体重50kgなら1リットル)を超えると、良いパフォーマンスはできないといわれます。さらには熱中症になる恐れがあります。また、タイミングよく摂れていないと食事中にも水分を多く飲むことになり、食べる量が減ってエネルギーや栄養不足につながります。
■甘すぎると逆効果
のどの渇きを感じてからでは遅く、その水分の摂り方は失敗だったといえます。早め早めに飲むことが必要です。【トレーニング開始の30分前に200ml、トレーニング中は10-15分ごとに100ml】の水分補給を奨励しています。そして次の3項目を頭に入れておいてください。
(1)必要な水分量は発汗量と同じ=のどの渇きが完全にない状態
(2)吸収率の高い温度は8-13度
(3)食事で栄養素が摂れていれば、種類は水やお茶で十分
スポーツドリンクを飲む場合は、濃度に気をつけてください。濃度が体液を越すと腸内で飲んだ水分を薄めるために体の水分が使われ、逆に水分不足に陥ります。塩分0.2%、糖分3%以下が目安で、市販のものなら2倍に薄めることが必要。糖分が10%にもなるジュース類は厳禁です。
【心掛けてほしい栄養の摂り方】(3)
最も重要なトレーニング直後の軽食
スポーツ選手にとって、食事は体力づくり、体調管理に大きく影響します。中でも今回のテーマである「トレーニング直後の軽食」は最も重要な事柄です。
トレーニングによって、体には大なり小なり、体たんぱく質の分解などダメージが起こり、エネルギー源の炭水化物も不足した状態になります。このダメージは、トレーニングが終わっても続くことが分かっています。その一方で体には、ダメージを修復しようとする反応(成長ホルモンの分泌)が1時間弱にわたり起こっています。
■修復しようとしているうちに材料補給
ダメージを一刻も早く止めて不足した分を補うために炭水化物を摂り、また、ダメージを修復しようと体が反応しているうちに修復の材料であるたんぱく質を摂ることが重要です。
タイミングとしてはトレーニング直後30分以内に、量としてはそれぞれ1日に必要とする量の10%相当が目安です。炭水化物40-50g、たんぱく質8-10gが理想ですが、夕食の量が減ることもあるので、この半量を目標にしてください。
トレーニング直後の軽食は、スポーツマンの体調管理、体づくりにとって最大のポイントであり、成長期ならなおさら重要です。例えば筋肉量を増やしたいボディービルの選手は、これを徹底して行っています。
▼以下は軽食の例です=数字は順にエネルギー、炭水化物、タンパク質量
▽卵サンド(130g)
286kcal/33.1g/11.5g
▽あんパン(80g)
224kcal/40.2g/6.2g
▽鮭おにぎり(1個170g)
182kcal/38.1g/5.1g
▽プリン85g
173kcal/13.9g/3.7g
この事業はスポーツ振興くじの
助成を受けて実施しています